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毛利元郎 絵画展 イタリア紀行 体験レポート ~ギャラリーいわき~

 ただ綺麗な風景を描く、そんな単純なことではないんです。もちろん、感動した瞬間を絵に残すとういう意味では間違いではないかもしれません。だけど、一枚の絵に、描き手のどれだけの思い、望み、時間が詰まっているのか、想像もつかないほど重みがあるものでした。

『毛利元郎個展ギャラリーいわきH29.9』の画像

 そんな偉そうなことを言っていますが、実は、個人の絵画展に行ったのは今回が初めてでした。当然、毛利さんとお会いするのも初めてで、個展を開くほどの画家さんを前に、初めは強張っていたように思います。でも、ギャラリーを出る頃には、表情筋が緩みきっていました。

 なんて、清廉な、穏やかな人なんだろう。不思議なことにお話を聞くだけで、当時の情景や毛利さんの心情が浮かんでくるんです。ほんの一瞬だけ、毛利さんの記憶の中に入り込めたような、そんな感覚です。きっと、それは、毛利さん自身がありのままをわたしに伝えようとしてくださっているから。飾らない、嘘偽りない言葉でゆっくりと語りかけてくださる様子に、心地良ささえも感じられました。

『扉の絵』の画像

 毛利さんの作品を見ていてすぐに気がついたことがありました。「扉」の絵が多い!周りの風景や人は描かれておらず、扉だけが真ん中にドンと。それは日本とイタリアの違いでもあって、イタリアの扉はほとんどが一点物で、手作りのデザインが施されているものが多く、だから扉1つ1つに個性があるそうです。その個性から「この扉の向こうにはどんな人が住んでいるんだろう」、「この扉の前でどんな会話をしているんだろう」と想像するのがたのしいと毛利さんはおっしゃっていました。

『レストランの入口』の画像

 このレストランの扉は、入ってすぐのショーケースの中に食材のエビが並んでいるのが見えて、なんとも美味しそう。表の照明が入口を優しく照らし、来た人をあたたかく迎えてくれる。店内に入らずとも、おちついた食事ができる場所なんだろうなと想像できる。街の灯が、暗いけどあたたかい色をしていて、「暗さを楽しんでいる」様子が伺える、そんなイタリアの夜が毛利さんは好きなんだそうです。

『日本とイタリア』の画像

  毛利さんの作品は、ほとんどがイタリアの風景なんです。ではなぜ、イタリアの風景画を描くのか。毛利さんは、日本とイタリアの一番の違いは、「空気」だとおしゃっていました。日本は湿度が高く、晴れていてもどこかフィルターがかかったように霞んで見えるが、イタリアは、カラッとしていて、街や物の色がストレートに眼に入ってくる。この2枚を比べると一目瞭然でした。

 そして、興味深かったのは、毛利さんは、イタリアにいる間は、絵を描きたいと思わないそうです。日本に帰ってきて初めて、イタリアの絵を描きたいと思うのだそうです。その理由は、絵には、毛利さんの望みの部分が含まれているから。イタリアにいる間は、もう望むものがないと思えるほど、心が満たされているということでしょう。

『夜のカヴァッロ橋』の画像

 伝えたいことはまだまだありますが、毛利さんの絵は1つ1つに生命が宿っているようで、写真では感じ取れない重みがあります。わたしが気に入った「夜のカヴァッロ橋」、見る人のその時の感情によって表情を変えるような、そんな構えが感じられます。みなさんも、毛利さんの人生の1ページを一度、ご覧になってはいかがでしょうか。

地域レポータ― 末長 沙千

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